思い切り音を出しても近所迷惑にならないとか、音がワンワン響きすぎないで適度に吸音して聴き心地が良い、などを自宅のホームシアターで実現したいのならば、ホームシアターにする部屋はちょっとした条件をクリアしていなければなりません。それはとても簡単な事ですが、最初の設計段階で業者さんと打合せしておかないと手遅れになる場合もありますので大事なポイントです。単純に言うと、まず、部屋の遮音(防音)性能を高めるために、床・壁・天井を遮音構造でがっちり造ってもらうことです。やわな造りでは当然のように音が漏れるし、共振するので響きも濁ってしまいます。次に、完成後のホームシアターは元の部屋と比べて床面積が狭くなり、天井高も低くなるので、それを見越した設計をしてもらうことです。床面積は広め、天井高は高めにしておいた方が良いということです。 簡単に説明すると、遮音性能確保のためには、元の部屋の内側に遮音構造の床・壁・天井をもう1層つけ足しますので、その分部屋が狭くなります。また、部屋の響き具合を調整するためには、さらに吸音層というものを壁・天井に対してもう1層つけ足しますので、さらに狭くなるというわけです。どれぐらい狭くなるかは、オーナーさんの望むホームシアターの条件によって異なるので一概には言えません。例えば、プロのスタジオなどであれば、壁は各面最低でも約300mm以上は狭くなり、天井は約1500mm以上低くなります。10畳の部屋が8畳になってしまう感覚です。 |
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まず最初に考えなければならないことは、ホームシアターの部屋としての遮音(防音)性能がどれくらい必要か、ということです。映画を観るにしても音楽を聴くにしても、音量はそれなりに大きくした方が気持ち良いですよね。でも、遮音性能が悪いと周りを気にして音量を我慢するしかなくなります。これでは楽しさ半減です。せっかく造るのですから、誰にも気兼ねすることなく楽しめる空間を造った方が絶対後悔しないと思います。 単純な判断として、自宅がいわゆる住宅地にあるのであれば、近隣に迷惑をかけないためにも、できるだけ外部に音をもらさないように気をつけるべきす。逆に、自宅の周囲近くには住居等が無く、音がもれても誰にも迷惑がかからないというような環境であれば、あまり重要ではありません(将来を見据えて判断すべき)。ただし、この場合ホームシアターで音を出すと、自宅内はとてもうるさくなることを覚悟しておく必要があります。 遮音性能が必要な場合は、ホームシアターになる部屋だけは遮音構造で造るように建築会社に指示する必要があります。部屋ができあがってからでは、対応できないことなので(壊して造り直しになる)最初に検討すべきです。 |
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設定した遮音性能が比較的小さいものであれば、前項で書いたように、建築時に遮音構造で部屋を造ってもらえば大体OKですが、大きな遮音性能を要求するのであれば、遮音構造の部屋の内側にさらに特殊な工事が必要になります。建築音響の世界では浮き構造と呼んでいますが、簡単に言えば、遮音構造の床・壁・天井を元の部屋から浮かしてもう一回造るという工事です(元の遮音構造の部屋は固定構造と呼びます)。専門色の強い工事内容なので一般的な業者では分からないです。 では、どういった場合に浮き構造が必要になるのでしょうか。 そもそも低音・重低音域の遮音性能を確保することはとても難しく、それは低域の音圧パワーによって床・壁・天井が振動してしまい、各面からエネルギー放射をしてしまうことに原因があります。つまり振動が伝わる固定構造は中高音域に対してはしっかりと遮音性能が確保できるのですが、低音・重低音域に対してはあまり効果がないというわけです。しかし、固定構造に浮き構造を付け足すと、”浮いている=振動絶縁の効果”となるため、低音域が原因のエネルギー放射作用を抑えることができ、結果として低音域の遮音性能が確保できるというわけです。具体的には、大型のスピーカーを導入して重低音を響かせるというような使い方の場合、固定構造だけでは遮音不足になる可能性が高く、浮き構造の検討も視野にいれた方が良いということです。 |
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次に、どのような音場(響き方)にしたいかを決めます。良く聴く音楽のジャンルが決まっているのであれば、それに合う音場を考えるのも良いでしょう。まあ、はっきり言って人それぞれの好みですので、オーナーの好き嫌いで決めれば良いかもしれません。ライブ気味が良いのか、デッド気味が良いのか?ちなみにプロのミックスダウンルームなどは、仕事として音楽の細部までを聴き分ける必要があるので、デッド(吸音が多い)気味な音場特性を好む傾向があります。つまりは、CDの原版を造っている人たちは、比較的デッドな環境でミックスダウンしてCD音源のバランスを決めているということです。 ライブ・デッドのどちらの方向性を目指すかは、遮音工事の次に行う、吸音層工事の施工方法に影響してきます。吸音材と反射材の量や配置・バランスなどを決定するために、それらを実際に壁や天井に取り付けながら、音場(響き)の変化を耳で確かめるという作業をします。求める音場(響き)を実現するためには、”経験”と”自分の耳”で確認し幾度の試行錯誤が必要になります。 |
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4で触れた音場の設定は、実は建築(部屋)だけでは実現(決定)できません。それは設置する音響機器システムの特性による影響がとても大きいということです。特にスピーカーは重要な要素です。建築音響設計でどんなに頑張っても、ジェネレックのスピーカーからタンノイのようなサウンドを響かせることは不可能ですからね。自分の求める響きに合うスピーカー選びは最初から考えておくべきです。ここで誤解して欲しくないのは、建築サイドでしっかり造りこむことによって、システムが本来持っている特性を素直に引き出すことが可能になるということです。建築で手抜きをすると、システム本来のサウンドを響かせることができないので、濁ったサウンドになります(一般住宅の床・壁・天井は造りがゆるい(軽い)ため、”ぶるるん”というような不快な反射音が後に残ったり、特に低域で非常にマナーの悪い音になります)。プロの部屋はこの部分にとてもこだわっています。 それから音響設計とは直接関係ないですが、音響機器と建築の取り合いも考えましょう(次項の映像機器も同様です)。アンプやプレーヤの収納位置・方法とスピーカーの設置方法です。これはオーナーの好みで決めれば良いですが、使い勝手とデザインを両立できるといいですね。ただし、スピーカーの設置に関して、サブウーファー、特大スピーカーの扱いは気を使うところです。重低音を出したときに、建築の造りが緩いと壁や天井がビビる(ビー・ブルブル・ガタガタと音を出す現象)ことがあります。業者さんには、とにかくがっちり造ってもらうしかないのですが、慣れていないと勝手が分からないこともあります。オーナーさんも重低音を出したらどうなるかを想像しながら、建築途中の現場を確認した方が良いです(壁や天井の下地部材を手などで叩いてみて、不快な音・振動がするようならNGです)。 |
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当HPでは、ホームシアターの「音響設計のポイント」を建築の視点から紹介しているので、映像機器の項目が6番目になってしまいましたが、実際にはシアターを構成するメインの機器ですから、シアターを造ろうと検討し始めたときには、既にある程度の目星をつけている方がほとんどではないかと思います。それに、前項の音響機器とのバランス(トータルコーディネート)もあるでしょうから、これだけを単独で検討することもないでしょうね。 映像機器の選択は、大きく分けるとテレビかプロジェクターのどちらかを選ぶことになり、テレビはさらにブラウン管と薄型テレビに分類できます。現実的には、ブラウン管を新規購入するという選択はほぼないでしょうから(今あるものを活用するのならともかく)、薄型テレビかプロジェクターのどちらかになると思います。薄型テレビの場合、台置き、壁掛け、ビルトインの3パターンが考えられます。またプロジェクターの場合、テーブル置きと天井吊りの2パターンとスクリーンの床置き、天井吊り、ビルトインの3パターンの組合せになります。いずれの方法も建築業者にとって難しい作業はないですが、壁や天井に取り付ける場合はその部分に補強工事が必要になるので、忘れずに業者さんに伝えておきましょう。 その他、あえて音響的に気をつけるとすれば、プロジェクターのファンノイズがあります。騒々しいお店の中では目立たなくても、しっかりと防音した部屋の中では結構目立つので静かなところで音を確認した方が良いと思います。あと、サブウーファーでズンズン重低音を出したとき、機器類の取り付けが緩いとガタガタと音が出るのできっちり締め付けてもらいましょう。それでもダメならフェルトなど柔らかいもので詰め物(パッキン)するなど考える必要があります。 |
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